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写真 宮島利宏
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 このページでは、科学研究費補助金などの外部資金を頂いて実施している現在進行中の研究プロジェクトの目的や主な成果を紹介しています。また研究分野についての簡単な解説を併せて掲載してあります。既に終了している研究プロジェクトに関しては、多くの場合、資金提供機関のウェブサイトで成果報告書が公開されています。また研究論文や学会発表についてプロフィールのページで案内しています。
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現在進行中のプロジェクト 隅田川

調査計画立案
科学研究費補助金による研究(終了年度の早い順)
  • 遷移過程にあるアマモ場からの溶存態・懸濁態物質の移出過程に対する定量的評価 (基盤B一般)分担 2017年度まで
  • サンゴ礁を対象とした生態系動態モデル体系の革新とレジリエンス強化策への貢献 (基盤 A一般)分担 2018年度まで
  • パラオニッコー湾における天然高CO2高水温環境のサンゴ礁群集 (基盤B 海外)分担 2019年度まで
受託研究費による研究
  • サンゴ礁島嶼系における気候変動による危機とその対策(JST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力事業)短期在外研究員 2017年度まで
  • 危機に瀕したサンゴ礁生物の避難場所:薄明帯の学際的解明による保全・再生の支援(住友財団環境研究助成)代表 2017年11月まで
  • 貧栄養化環境における沿岸生態系統合管理手法の提案 (JSPS)研究協力者 2018年度まで
  • コーラル・トライアングルにおけるブルーカーボン生態系とその多面的サービスの包括的評価と保全戦略(条件付採択/JST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力事業)分担 2021年度まで

海草藻場の研究
 海草藻場は、陸上に生える草と同じような緑色の被子植物が浅い海の底を草原のようにおおっている生態系です。海草は強力な光合成能力を持ち、海水中から二酸化炭素を吸収することによって海洋酸性化をローカルに緩和する作用を有するほか、グローバル・スケールでは大気中の二酸化炭素の有力な吸収源になっている可能性があります。しかし世界全体の藻場の分布はまだ完全に把握されておらず、地域的な特性についても十分な比較研究が行われていません。
 私共は日本沿岸から東南アジア、オーストラリア東部にかけての海草藻場を研究対象として、炭素循環の研究、特に海草藻場の堆積物に蓄積される有機炭素量の評価とそのメカニズムの解明を目標とした研究を行って来ました。この研究は1996年頃から、私の研究室の教授であった小池勲夫氏を中心に始められ、断続的に20年近くも続いています。現在は共同研究者として、水産総合研究センターの浜口昌巳氏と堀正和氏、北海道大学の仲岡雅裕教授、海洋研究開発機構の田中義幸氏、株式会社ジオアクトの安達寛社長、また所内では特に国際沿岸海洋研究センターの福田秀樹氏ほかの方々のお世話になっています。
 基本的な研究手法は、各地の海草藻場で堆積物のコア(柱状試料)を採集し、その中に含まれる有機炭素の量と堆積した年代を調べて有機炭素の蓄積速度を求めることです。海草藻場に集積する有機物には、海草自身の光合成によって作られる有機物に加え、海草に付着して生育する微細藻類の有機物、外部から海流によって運ばれてきて藻場内に沈澱する有機物などもあるため、セディメントトラップ等を用いてこのような沈降性有機物を採集します。沈降粒子や堆積物に含まれる有機炭素を起源により分類して評価するために、炭素安定同位体比やDNAバイオマーカー等を利用します。また環境・水質条件や堆積物の物理性を調べることにより、有機炭素の蓄積を左右する要因について調査します。
 海草藻場はまた、その一次生産能力の高さと環境を複雑化する働きのため、多様な海洋生物に豊かな食物と住み場所を提供しています。私共は上記の炭素循環研究と並行して、海草藻場の食物網、特に微生物を含むデトリタス食物網の研究を進めています。ここでも安定同位体比分析や分子遺伝学的手法が有力な研究ツールとなります。現地調査だけでなく、飼育培養実験や酵素活性測定等の実験的な手法を併用しています。
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  (写真上)タイ・アンダマン海沿岸の海草藻場の調査風景。
  (写真中)海草藻場内での堆積物コア試料の採集。
  (写真下)採集された長さ 1 m のコア試料(半分に割ったところ)。

サンゴ礁の研究
 サンゴ礁は亜熱帯から熱帯にかけての沿岸域で、物理学的にも生態学的にも根幹的な役割を果たしている重要な生態系ですが、高温条件や pH の低下に対して概して脆弱であることから、地球温暖化や海洋酸性化等の地球環境変動によって大きな被害を受けると予想されています。またそれ以前に、サンゴ礁生態系は漁業活動や陸域からの水質汚染などの影響を、文明史を通じて受け続けていて、現在では、高次捕食者を含めた健全なサンゴ礁の状態というのがどういうものであるか、その実例を観察することがほぼ不可能なほどになってしまっています。
 私共は主としてサンゴ礁生態系の栄養塩・有機物動態をテーマとして、その基礎的な定式化を進めるとともに、様々な人為的環境変化がサンゴ礁に及ぼす影響を物質循環と代謝活性の観点から調査しています。私共のサンゴ礁研究は、1996年に始まった東京大学大学院理学系研究科の茅根創教授が主宰するCRESTプロジェクトから開始され、その後、同じ茅根教授の主宰する新学術領域「サンゴ礁学」や、東京工業大学の灘岡和夫教授の主宰するSATREPS等のプロジェクトを通して発展させて来ました。現在の外部共同研究者は、上記の灘岡教授のほか、同じ東工大の渡邉敦氏、中村隆志氏、山本高大氏、琉球大学の栗原晴子氏、長崎大学の梅澤有氏、フィリピン大学の McGlone 教授といった方々です。また同じ研究室内の森本直子氏と Alexander Wyatt 氏も主にサンゴ礁の研究に携わっています。
 これまでは主に沖縄県石垣島周辺のサンゴ礁をフィールドとして、生態系レベルの栄養塩・有機物動態、外来性栄養塩負荷(地下水、大気降下物、養殖場排出負荷等)の物質循環への寄与、サンゴ−共生藻間の物質交換などをテーマに、現地調査と室内実験をベースとした基礎的な研究を進めて来ました。窒素循環研究が中心ですが、リンの収支や溶存有機炭素に関する調査も行われています。最近はこれに加えて、移植実験や屋外水槽実験による環境変動応答の研究も始めました。今後は、生態系レベルだけでなく種間相互作用を中心とした群集レベルのプロセスに対象を広げるとともに、日本国内では見られない特徴を持つ海外のサンゴ礁にも積極的に活動の場を広げていきたいと考えています。
coral reef

transplantation experiment

outdoor incubation experiment
  (写真上)石垣島北西部のサンゴ礁。
  (写真中)移植実験のためのプロット設置作業風景と、移植用に採集したサンゴ。
  (写真下)サンゴに対する海草の影響を調べるための屋外水槽実験。

安定同位体の研究
 安定同位体比分析法は、食物網構造や物質流通経路の解析のための優れたツールとして、生態学・環境科学の分野において広く利用されています。しかしながら、普及している既存の方法を単純に対象に適用するだけでは通り一遍の結果しか得られませんし、対象とする系の複雑さに見合うだけの解像度のある情報がなかなか得られないのが通常です。目的とする研究成果を得るためには、同位体比分析を適用する前に、対象とする系の特性に対応したサンプリング方法と、分離分画作業を含めたサンプルの前処理方法をよく検討しておく必要があります。また、得られたデータをどういうモデルに載せて解釈するべきかを事前によく吟味した上で、それに適した調査を計画することが求められます。
 現在、私共の研究室では、有機物や固体状無機物の炭素・窒素・硫黄・酸素・水素の安定同位体比を分析する質量分析計、アミノ酸や脂質等の化合物別炭素・窒素安定同位体比が分析できる質量分析計、水の酸素・水素安定同位体比を分析するCRDS分析装置が稼働しています。また、国際沿岸海洋研究センターの白井厚太郞氏の協力を得て炭酸塩の酸素・炭素同位体比分析を行っているほか、リン酸の酸素安定同位体比分析も実施可能です。私共は分析方法だけでなく、サンプリング戦略、試料の分離分画法、データのモデリング方法を工夫することにより、同位体比分析の効用を最大化する方法論の整備を目的として研究を進めています。
 GC/C/IRMSや分取HPLCを利用した化合物別同位体比分析は分離分画法の一つであり、これにより同位体比分析で得られる情報量を格段に増やすことができます。私共は主に環境物質の起源解析や生物間の共生関係の解析にこの手法を応用しています。しかしながら海洋堆積物のような複雑な環境試料を出自別に分別するためには化合物に分けるだけでは十分でないため、密度・粒径・表面特性等に基づく物性分画法を応用する試みを行っています。分析データの解釈においては、各種の決定論的もしくは確率論的混合モデルがよく適用されます。私共はさらに、東京工業大学の中村隆志氏の協力を得て、栄養塩や炭酸塩の安定同位体比を変数とする代謝モデル・3次元流動場生態系モデルの作成を進めています。今後は、有機物の化合物別同位体比分布をシミュレートするモデルに取り組む計画です。
 私共の研究室では、同位体比分析を体験する機会の少ない東南アジアの若い研究者を対象として技術研修を行ったり、知識を普及する活動にも取り組んでいます。
FLASH HT plus

GC IsoLink

JICA training
  (写真上)C/N/O/H/S バルク安定同位体比分析に使用する前処理装置の一部。
  (写真中)化合物別安定同位体比分析に使用する前処理装置の一部。
  (写真下)JICA の招聘事業による安定同位体比分析の研修風景。

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Toshihiro Miyajima, Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo
Last modified: 3 July 2017