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写真 宮島利宏
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現在進行中のプロジェクト 隅田川

調査計画立案
科学研究費補助金による研究
  • ブルーカーボン生態系からの有機炭素の外洋移出・隔離過程の実証技術開発とモデル化 (基盤B 一般)代表 2021年度まで
  • パラオニッコー湾における天然高CO2高水温環境のサンゴ礁群集 (基盤B 海外)分担 2019年度まで
  • サンゴ礁を対象とした生態系動態モデル体系の革新とレジリエンス強化策への貢献 (基盤A 一般)分担 2018年度まで
受託研究費等による研究
  • サンゴの白化現象メカニズム究明と大規模白化に対する生物化学的防止・救済策の確立(環境研究総合推進費)分担 2020年度まで
  • 貧栄養化環境における沿岸生態系統合管理手法の提案 (JSPS)研究協力者 2018年度まで
  • コーラル・トライアングルにおけるブルーカーボン生態系とその多面的サービスの包括的評価と保全戦略(JST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力事業)分担 2021年度まで

海草藻場の研究
 海草藻場は、陸上に生える草と同じような緑色の被子植物が浅い海の底を草原のようにおおっている生態系です。海草は強力な光合成能力を持ち、海水中から二酸化炭素を吸収することによって海洋酸性化をローカルに緩和する作用を有するほか、グローバル・スケールでは大気中の二酸化炭素の有力な吸収源になっていると考えられています。海草藻場はまた、その一次生産能力の高さと環境を複雑化する働きのため、多様な海洋生物に豊かな食物と住み場所を提供しています。
 しかし世界全体の藻場の分布はまだ完全に把握されておらず、その生態系機能の地域的な特性についても十分な比較研究が行われていません。特に海草藻場がその活発な物質生産を通して隣接する生態系や外洋域に及ぼしている影響については未解明な部分が多く、最近も熱帯性海草が隣接するサンゴ礁を細菌の感染から守っている可能性を示すアメリカの研究者による実験結果が Sicence 誌に発表されて話題を呼びました。
 私共は日本沿岸から東南アジア、オーストラリア東部にかけての海草藻場を研究対象として、炭素循環を中心とする生態系機能とそのメカニズムの解明を行って来ました。この研究は1996年頃から、私の研究室の教授であった小池勲夫氏を中心に始められ、断続的に20年近くも続いています。
 現在は、SATREPS プロジェクトの一環として海草藻場から外洋域に移出・系外隔離される有機炭素の動態に関する物理探査と地球化学的分析を組み合わせた現地調査(フィリピン大学の F.P. Siringan教授や八戸工業大学の田中義幸氏等との共同研究)、環境 DNA を利用した系外移出有機炭素の定量評価技術の開発(水産研究・教育機構の浜口昌巳氏や東京工業大学の中村隆志氏等との共同研究)、カキ養殖と関連したアマモ場生態系サービスの調査(水産研究・教育機構の堀正和氏を中心とした国際共同研究)を平行的に進めています。堆積物のコア(柱状試料)の採集とその堆積年代の評価においてはそれぞれ株式会社ジオアクトの安達社長と AORI の高解像度環境解析研究センターの皆さんのお世話になっています。
seagrass_survey.png

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  (写真上)タイ・アンダマン海沿岸の海草藻場の調査風景。
  (写真中)海草藻場内での堆積物コア試料の採集。
  (写真下)採集された長さ 1 m のコア試料(半分に割ったところ)。

サンゴ礁の研究
 サンゴ礁は亜熱帯から熱帯にかけての沿岸域で、物理学的にも生態学的にも根幹的な役割を果たしている重要な生態系ですが、高温条件や pH の低下に対して概して脆弱であることから、地球温暖化や海洋酸性化等の地球環境変動によって大きな被害を受けることが懸念されています。またそれ以前にも、サンゴ礁生態系は漁業活動や陸域からの水質汚染などの影響を、文明史を通じて受け続けていて、現在では、高次捕食者を含めた健全なサンゴ礁の状態というのがどういうものであるか、その実例を観察することがほぼ不可能なほどになってしまっています。
 私共は主としてサンゴ礁生態系の栄養塩・有機物動態をテーマとして、その基礎的な定式化を進めるとともに、様々な人為的環境変化がサンゴ礁に及ぼす影響を物質循環と代謝活性の観点から調査しています。私共のサンゴ礁研究は、1996年に始まった東京大学大学院理学系研究科の茅根創教授が主宰するCRESTプロジェクトから開始され、その後、同じ茅根教授の主宰する新学術領域「サンゴ礁学」や、東京工業大学の灘岡和夫教授の主宰するSATREPSプロジェクト等を通して発展させて来ました。これまでは主に沖縄県石垣島周辺のサンゴ礁をフィールドとして、生態系レベルの栄養塩・有機物動態、外来性栄養塩負荷(地下水、大気降下物、養殖場排出負荷等)の物質循環への寄与、サンゴ−共生藻間の物質交換などをテーマに、現地調査と室内実験をベースとした基礎的な研究を進めて来ました。窒素循環研究を中心に、リンの収支や溶存有機炭素に関する調査も行われています。最近はこれに加えて、移植実験や屋外水槽実験による環境変動応答の研究も始めました。
 現在は、パラオの複雑な海洋環境に生育するサンゴ礁の物質代謝と多様性維持に調査(琉球大学の栗原晴子氏や東工大の中村隆志氏等との共同研究)、サンゴ礁の大規模白化予防・回復技術に関する研究(琉球大学の藤村弘行氏を中心とする環境研究総合推進費によるプロジェクト)、食物網を通しての基底資源動態とその環境変動応答に関する研究(東工大の灘岡和夫氏を中心とする科研費課題)、薄明帯サンゴの物質代謝と物理環境に関する現地調査(Alex Wyatt 氏を中心とする共同研究)を並行して行っています。
coral reef

transplantation experiment

outdoor incubation experiment
  (写真上)石垣島北西部のサンゴ礁。
  (写真中)移植実験のためのプロット設置作業風景と、移植用に採集したサンゴ。
  (写真下)サンゴに対する海草の影響を調べるための屋外水槽実験。

安定同位体の研究
 安定同位体比分析法は、食物網構造や物質流通経路の解析のための優れたツールとして、生態学・環境科学の分野において広く利用されています。しかしながら、普及している既存の方法を単純に対象に適用するだけでは通り一遍の結果しか得られませんし、対象とする系の複雑さに見合うだけの解像度のある情報がなかなか得られないのが通常です。目的とする研究成果を得るためには、同位体比分析を適用する前に、対象とする系の特性に対応したサンプリング方法と、分離分画作業を含めたサンプルの前処理方法をよく検討しておく必要があります。また、得られたデータをどういうモデルに載せて解釈するべきかを事前によく吟味した上で、それに適した調査を計画することが求められます。
 現在、私共の研究室では、有機物や固体状無機物の炭素・窒素・硫黄・酸素・水素の安定同位体比を分析する質量分析計、アミノ酸や脂質等の化合物別炭素・窒素安定同位体比が分析できる質量分析計、水の酸素・水素安定同位体比を分析するCRDS分析装置が稼働しています。また、国際沿岸海洋研究センターの白井厚太郞氏の協力を得て炭酸塩の酸素・炭素同位体比分析を行っているほか、リン酸の酸素安定同位体比分析も実施可能です。
 私共は分析方法だけでなく、サンプリング戦略、試料の分離分画法、データ解析方法を工夫することにより、同位体比分析の効用を最大化するテクニックの追求を進めています。また東京工業大学の中村隆志氏の協力を得て、栄養塩や炭酸塩の安定同位体比を変数とする代謝モデル・生態系モデルの作成を進めています。
 また天然の安定同位体比を指標として利用することに加え、人為的に濃縮した安定同位体をトレーサーとして利用する実験技術の開発と応用を進めています。最近は特に食物連鎖の時定数の解析、代謝系の環境ストレス応答の研究、溶存有機物の分解過程の研究等にトレーサー技術の応用を試みています。
 私共の研究室では、同位体比分析を体験する機会の少ない東南アジアの若い研究者を対象として技術研修を行ったり、知識を普及する活動にも取り組んでいます。
FLASH HT plus

GC IsoLink

JICA training
  (写真上)C/N/O/H/S バルク安定同位体比分析に使用する前処理装置の一部。
  (写真中)化合物別安定同位体比分析に使用する前処理装置の一部。
  (写真下)JICA の招聘事業による安定同位体比分析の研修風景。

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Toshihiro Miyajima, Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo
Last modified: 30 April 2018